スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「はじめまして。私、高木 幸恵と言います」
小さな体を強張らせながら、必死で名乗る姿はなんともかわいらしかった。
「涼の友達やってね」
「はい」
一生懸命に話している姿を見ると、応援したくなる。
「あの・・・私、前から先輩の事が好きでした。これを受け取ってください」
目の前に出されたのはチョコが入っていると思われる紙袋。
「ありがとう。でも気持ちには応えられないよ」
はっきりと言わないとな。すると目の前の女の子は顔を上げた。
「はい、わかってます。先輩には彼女がいるからダメだってわかってたけど、気持ちは伝えたくて・・・」
大きな目は今にも涙が零れそうなくらいに潤んでいた。
「彼女?」
「はい。私、先輩が原田先輩を正門で待っていたのを見たことあるんで」
俯いて話す内容に俺は驚いた。
原田先輩・・・さっちゃんかぁ。同じ高校なのか・・・・。
「・・・・・・」
俺は何も言うことができずに、目の前の女の子が話す様子を見ていた。
「私、原田先輩に憧れてるんです。話したこともないし、私のことも知らないと思うんですけど・・・。美人でスタイルがよくて、頭もよくて、運動神経も抜群、しかも優しい」
憧れ・・・。俺だって大差ないよ。
「俺、さっちゃんの彼氏じゃないし」
俺の正直な言葉に、彼女は目を真ん丸にして声を上げた。
「えっ?違うんですか?」
「あぁ」
違うよ・・・彼氏なんかじゃない。そしてさらに彼女は、俺を動揺させる一言を与える。
「でも、先輩は原田先輩が好きなんですよね?」
なんてストレートに聞くんや?この子は。
「・・・・・・」
彼女の言葉に何にも言い返せない俺は、俯くばかりだった。
「隠してもわかりますよ。先輩の顔に書いてありますから」
ニッコリ笑う目元には、涙がたまっていて、それがまた痛々しかった。
まいったなぁ。
「ごめんな」
「謝らないでください」
なんて、凛とした子なんだろう・・・。完璧に俺が押されてる・・・。
「・・・・・・」
「先輩も頑張ってくださいね!」
「ありがとう」
「じゃあ、私失礼します」
そう言って、走って帰って行った。
告白された相手に励まされてどうする。
情けないな・・・俺。
それにしても、相手が他の人が好きな事がわかっているのに、告白できる君はすごいよ・・・。
俺なんて・・・うじうじ考えて、もう1年もこんな事をしてる。
こんな奴、さっちゃんが好きになってくれないよな。
俺はまた大きなため息をついた。