スタートライン~私と先生と彼~【完結】
卒業
3年間過ごしたこの学校とも今日でお別れ。
「圭、お前入試どうやったんや?」
「あぁ、まぁ大丈夫」
相変わらず口数が少ないが、自信満々のオーラが凄まじい。
「隆、あの子呼んでるで」
木下が俺に近づきながら言った。
教室のドアの前には、隣のクラスの柳澤さんが緊張した面持ちで立っていた。
俺が近づくと、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
選択授業の数学が同じだから名前は知っているが、話したこともない。
どんな子かも知らない。
彼女のつむじを見ながら考えていると、急に顔を上げた。
「私、笠野くんが好きなんです。付き合ってもらえませんか?」
俺の目を見ながら言ってくれた柳澤さんの目を見ると、俺は自分の気持ちを伝えた。
「ごめんね。俺、好きな子がいるから」
俺の答えを耳にした瞬間、顔を曇らせた彼女は俯いてしまった。
「そっかぁ。ごめんね。ありがとう」
そう言って、柳澤さんは走って行った。
謝るのは俺の方だよ。勇気を出して言ってくれたのに、応えれなくてごめんね。
俺なんて気持ちも伝えずにうじうじしてるんやから・・・情けなさすぎる・・・。
柳澤さんが立ち去った後、木下がニヤニヤしながら近づいてきた。
「お前、今日だけで何人目だ?」
木下は、柳澤さんの後ろ姿を見ながら俺に聞いていた。
「3人目」
「しらっと言うなよ」
俺は、式が終わった後に、あと3人に告白された。
・・・皮肉なもんだな。
好きな相手に、他に好きな奴がいるなんて。
さっちゃんに好きになってもらえなかったら意味がない。
きっと玉砕してしまうんやけど、気持ちを伝えない方が後悔する。
さっちゃんからの卒業になるかもしれないけど、俺は言うぞ!!
俺は、木下たちにさっちゃんの学校の卒業式の日を聞き、行くことにした。