スタートライン~私と先生と彼~【完結】
フラフラする気持ちを抱えていると、「理香達来た~?」と言いながら、木下達が戻ってきた。
しばらくして、ようやく正門の方へやってきたさっちゃん達。
「卒業おめでとう」
俺ら3人は声を合わせて言った。
さっちゃんの顔には笑顔が戻っていた。
帰り道、俺はさっちゃんと並んで歩いた。
さっちゃんは、何か考えてるみたいでぼんやりしている。
きっと、あいつのことだ。
さっきあいつに言われたことを考えていたら、さっちゃんが後ろから呼び止められた。俺らの目の前には男。
なんだ?こいつ。
その男は、奥村というらしく、俺のことを気にしていた。
申し訳ないが、空気を読んでどこかへ行ったりはしないよ。
俺は、さっちゃんの目の前の男を睨む。
奥村は、さっちゃんの手前、あまり柄の悪いことはしたくない様子。
そして、さっちゃんに急かされて、口を開く。
「あぁ、原田・・・・やっぱり俺諦められなくてさ・・・。付き合って欲しい」
やっぱり?
諦められない?
一度フラれてるのか?
奥村は、しつこいくらいに食い下がる。
いい加減にしろよ!
さっちゃんが困っている。助け舟くらい出してもいいよね?俺も部外者じゃないし。
「奥村くんよ・・・好きな女の顔色も伺えないようじゃダメなんじゃないか?」
俺は我慢ができなくなり、目の前の奥村って男を睨みながら言っていた。
「お前、なんなんだよ!関係ないやん!」
奥村は怒ったように言った。そりゃそうやんな、知らない奴に告白の邪魔されたら、腹立つよな。
でもな、『関係ない』ってのは間違ってるよ。
「俺は笠野。さっちゃんが困ってるのもわからんの?」
なんで俺はこんなにも冷静に対処してるんだ?
「・・・原田さん?」
奥村は、我に返ったのか、眉をひそめてさっちゃんの方を向いた。
「ごめんなさい」
さっちゃんは、頭を下げた。
そして奥村は、悔しそうな顔はしていたが、さっちゃんに迷惑がかかると思ったのか、立ち去った。
この出来事により、俺は喉まで出てきている、『好き』という言葉を言うタイミングを失ってしまった。
今日こそは、言うと決めたのに・・・。
でも今の君を見て、もう少し待とうと決めた。
だって君の瞳はもう未来を見ようとしているから・・・。でも忘れなくてもいいんやで。
あいつの事を想っている君も含めて好きなんやから・・・。
だから、いつか俺の気持ち受け取って下さい。