スタートライン~私と先生と彼~【完結】
想い
何十年ぶりかの寒い冬が過ぎ、春が来た。
俺はまだ気持ちを伝えていない。
でも恋人同士のようによく会っている。
卒業してから、無理して笑っている時があったが、最近は無理して笑わなくなった。
もうあいつのこと忘れることができたんかな?
そろそろ気持ちを伝えてもいいかな?
でもこの楽しい生活も捨てたくはない。
それとは逆に、膨らみに膨らんだ俺の気持ちは限界となっていた。
今日も夕飯を一緒に食べた後、さっちゃんを家まで送るために、並んで歩いている時に、くだらない質問をしてしまった。
「理工学部って、男が多いんやろ?」
なんてアホな質問なんやろう。いまさら何を聞いてるんだ俺は。
「そうやな・・・9割が男の子かな?」
9割か・・・実際に割合を聞くとやっぱり衝撃的だ。
さっちゃんの周りに9人の男がいる計算になる。
「・・・・・心配やな〜」
つい口に出してしまったが、本心だから、しかたない。
やっとあいつがいなくなった途端、男だらけの中に入るのが不安でしかたなかった。
「何が心配なん?」
さっちゃん・・・?
これってわざと聞いてる?
俺は、意地悪な笑顔を零しているさっちゃんを見てそう感じた。
「えっ?何がって・・・・」
俺はもう自分の気持ちをごまかしきれなくなっていた。
「だって・・・さっちゃんを取られたら嫌やから」
言ってしまった。
「取られるって、私は隆の物じゃないよ〜」
さっちゃんは俺の顔を覗き込む。
わかってるでしょ?俺の気持ち。
少しの沈黙の後、俺は決意した。
言うぞ!
「さっちゃん、言うよ・・・」
俺は、静かに言い放つと、さっちゃんも真剣な眼差しになっていた。
「うん」
さっちゃんは俺が今から言うことがわかっているようだ。
「さっちゃん、ずっと好きでした。付き合って下さい」
俺は、ゆっくりとこれまでの気持ちを込めて、ようやく告白することができた。
返事は・・・?
この待っている数秒間は、何分にも感じられた。