スタートライン~私と先生と彼~【完結】
涙をこらえて
研修への出発の前の日。
朝から大雨が降っていた。
それでも沙知は俺に会いに来てくれた。
「隆・・・ほんまに行くんやね」
意外だった。
笑顔で『頑張ってね』って言ってくれると思っていた。
「どうした?」
いつもと様子が違う彼女に優しく声を掛けた。
「だってさ、寂しいんやもん」
あぁ、嬉しい。
高校時代の片想いが嘘のようだ。
人の心は簡単に変わるものではないと思うけど、彼女にここまで言わせたら、もう心配なんてしなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
でも・・・心配だ。
「大丈夫。連絡するから」
「うん」
涙目で答える彼女は、確実に、俺に恋をしている。
例え、自惚れだったとしても、そう思いたい。
待っててよ。俺の場所を残しておいてよ。お願いだから。