スタートライン~私と先生と彼~【完結】
結局、一睡もできずにバスを降りた。
再び走り、電車に乗る。
見慣れた風景が広がるが、見る余裕なんてない。
沙知の地元の駅に着いた。
俺は最後の力を振り絞って走った。
倒れる覚悟で走った。
やっと、沙知の家にたどり着いた。
深呼吸を一度してからインターフォンを鳴らす。
「どちらさまですか?」
お母さんが出た。
「朝早くにすみません。笠野です」
「えっ、隆くん?ちょっと待ってね」
俺の突然の訪問にに驚いたようだった。
「ど、どうしたの?今、東京じゃないの?」
「さ、沙知さんはいますか?」
早く会いたい。
「ええ、いるけど、遅くまで起きてたのか、まだ降りて来ないのよ」
「お願いします。さっちゃんに会わせてください」
「会わせてって、あなたたち何かあったの?」
俺は答えなかった。
でも、お母さんは俺の切羽詰まった表情を見て、
「わかったわ」
と言い、さっちゃんを呼びに行ってくれた。
なかなか降りてこない。
嫌がってるのか?もう、俺なんかに会ってくれないのか?
頼む。
話しをしよう。