スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「先生、じゃあ、この4年間どうしてたの?」


質問の意図がわからなかった。


「どうって?」


「彼女はいなかったんですか?」


原田の、表情は堅い。落ち着いた様子で聞いてくる彼女の雰囲気がいつもと違うのには気づいていたが、頭が上手く回らなかった。


「彼女は・・・いたよ。でも、本気じゃなかった」

「本気じゃなかったって・・・?」

原田は、表情を変えることなく、俺に聞いてきた。

「本当に好きなのは、君だけだよ」


そう、本気なのは君だけだよ。


「先生・・・」


原田は俯きながら言った。彼女は真剣な眼差しで話し始める。

「私は・・・あなたを忘れるのに1年かかりました」


1年も?俺は期待に胸を膨らませる。


「その間、ずっとそばにいてくれた人がいました。先生が卒業式に声を掛けた男の子です」


俺の頭に、文化祭の時に宣戦布告されたことと、卒業式の日の様子が浮かんだ。


あいつか・・・。


「彼は初めて会った時から、3年間ずっと、私の中から先生が消えるまで、自分の気持ちを伝えることなくそばにいてくれました。そして、今では私の中には彼しかいません」


・・・・・・それって、もう無理ってことか?


「先生、私たちのスタートラインは、卒業式だったんですよ、きっと」


なんでそんなにあっさりと言うんや?


俺があの時、突き放したからか?


「あの時の私は、先生に憧れていたのではなく、確かに恋をしていました」
俺もそうやで。君に恋をしていた。そして、目の前の君にも・・・。


「でも今は違う。私は、私のことをずっと見続けてくれている人と一緒にいたい」


なぜ?という言葉だけが頭の中をぐるぐる回る。


「原田・・・それってお情けで付き合ってるんじゃないのか?ずっと、自分のことを想ってくれてるから、不憫に思えて・・・」


「違いますよ。私は好きな人としか付き合わない。先生みたいに『本気ではない』のに、付き合うことはできませんから」


原田の言葉が胸に突き刺さった。最後に聞かせてくれ。



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