スタートライン~私と先生と彼~【完結】
7:30
行かないと!私は慌てて服を着替えていた。
その時、母さんが呼ぶ声がした。
「沙知、起きてるの?」
「なに?後にしてくれる?」
「隆くんが来てるけど・・・」
えっ?隆?こんなところにいるはずがない。
「沙知、隆くんが外で待ってるから早く出てきなさいよ」
外で待ってる?
私は夢中で玄関まで向かった。
玄関のドアを開けると、そこには疲れた顔の隆が立っていた。
「隆、何してるんよ!」
「わざわざ夜行バスに乗って来た人間に言う台詞じゃないやろ?」
「夜行バス?」
「そうやで、新幹線の最終行ってしまってたから」
それでわざわざ?
「電話とかあるやん」
「よく言うよ。出なかったくせに」
そうやった。私が無視したんや・・・。
「ごめん」
「さっちゃん、泣いたやろ?目が真っ赤やし、めっちゃ腫れてる」
えっ、私どんな顔してるん?
「誰のせいやと思ってるんよ!」
「ごめん。俺のせい」
「いいよ。それなら、なんでさっき、電話した時に出てくれなかったんよ」
「あっ、バスの中で電池切れた」
・・・・・・そうやったんや。
私は、地面に崩れ落ちた。
「沙知!大丈夫?」
「うん。隆の顔を見て安心しただけ」
「あんたたち、朝っぱらから玄関前でいつまで喋ってるの?早く入りなさい。」
私たちは家に入った。
「隆くん、何も食べてないでしょ?」
「はい。」
お母さんは二人分の朝食を用意してくれていた。
「あんたたちね、何があったか知らないけど、ちゃんとお互いの話しを聞きなさいよ。いくら好き同士でも、他人の考えなんて、そう簡単にわかるものじゃないんやから」
母さんは珍しく真面目に話してくれた。