スタートライン~私と先生と彼~【完結】
今は沙知の部屋にいる。
ベットにもたれ掛かり座っている。
彼女は何から話したらいいのか迷っているみたい。
俺も聞きたいことがいっぱいあって、混乱している。
先に話し出したのは、沙知だった。
「不安だった?」
「うん」
俺は正直に話した。
「・・・・だってさ、いつか奪われるんじゃないかって不安で不安で・・・」
沙知は、うれしそうに俺の顔を覗き込んでいた。
「隆、かわいい」
沙知の方がかわいいよ・・・・ってことじゃなくて!!
「沙知、先生とは何を話したんや!」
俺は真相をを聞こうとした。
「『好きだから付き合って』って・・・」
それは電話で聞いたよ。
「そういうことじゃなくて!その・・・・・」
「じゃあ、その時どう思った?」
沙知が俺の言葉を遮るように、俯きながら聞く。
俺は重い口を開いた。
「・・・・・冗談じゃない・・・突き放しておいて都合のいいこと言いやがって!どれだけ、沙知が苦しんだと思っているんや・・・。正直、殴ってやりたいと思ったよ。俺の方が好きや!ってね」
本当やで、沙知。
彼女は、俺の目を見ながら話を聞いてくれている。
「ありがとう」
さっちゃんの目から一粒の涙が落ちた。
「ごめん。あんな嘘をついて・・・。でも、さっちゃんのことを思って言ったことやからね。結果は間違ってたけど・・・・・」
「ふふふ・・・ほんまに大間違い」
と笑いながら言った。
「でも、大慶高校に決まった時、嬉しかったんじゃない?」
さっちゃんの気持ちを聞きたい。
「・・・嬉しくはなかったよ」
そうなんや・・・。
「むしろ不安だったよ」
「なんで?」
「先生に会うことによって、あの時の気持ちが甦ってきたらどうしようって・・・そうなったら、隆を傷つけてしまう・・・・・。それよりね、私たちの邪魔をしないでって思った・・・」
そうなんや・・・会いたいのかと思ってたよ。
「ごめんね。俺、全然さっちゃんの気持ちわかってなかったよ」
なんて俺はあほなんや・・・沙知がこんなに想ってくれてるなんて・・・嬉しいよ。
「隆、泣いてるの?」
俺は、いつの間にか泣いていた。
嬉しくて、嬉しくて・・・・。
そんな俺を優しく抱きしめてくれた。
あぁ、沙知の匂いだ・・・。
落ち着く・・・・。頭を撫でてくれる手が優しい。