スタートライン~私と先生と彼~【完結】
『さ、坂上・・・』
俺は、恥ずかしそうに立っている彼女の目に吸い込まれそうだった。
『斎藤くん、いいかな?』
彼女は遠慮がちに聞いてきた。
『あぁ・・・』
『斎藤くん、本当にありがとう。
斎藤くんが勉強教えてくれたから、合格できたんよ』
言葉を選びながら、ゆっくりと話す彼女の表情の一つ一つを見落とさないように、見つめた。
ただのお礼か・・・。
って俺は何を期待してるんだ?
彼女の言葉に自分の気持ちが露呈された。
『いいよ・・・。気にせんでも』
締め付けられるような胸の痛みを隠すように俺は、言葉を搾り出した。
『・・・あと・・・』
唇を噛み締めて、言いにくそうにしている彼女に俺は、僅かな期待をしていた。
『私ね、斎藤くんのこと好きなの!付き合って欲しい・・・』
最後の方は声が小さくて聞き取れないくらいだった・・・。
『・・・いいよ』
俺は考える間なく答えた。
その時の恵美の満面の笑みが今でも忘れられない。