♀ my prince ♂
「こちらこそ。てかさー、ちょっと話さない?三人で」
「俺はいいけど…未亜ちゃん、いい?」
「えっ…うん…」
歩実ちゃんを見たあと玲央くんが私を見る。
動揺しているのがバレないよう返事をした。
だって…“イヤ”なんて言えないよ…。仮にも玲央くんの幼なじみなんだもん…。
歩実ちゃんは女の子だけど…亮くんと同じ立ち位置、っていうことでしょ…?
「じゃあ、こっち座ろー?」
「行こ、未亜ちゃん」
歩実ちゃんが椅子とテーブルのある所へと歩いていく。
それに合わせて玲央くんも私の手を引いて歩き出した。
ガタ…ッ
椅子の座り位置は…玲央くんの隣りには私。
テーブルを挟んだ彼の前に歩実ちゃんが座る。
「それより未亜ちゃん。さっきはごめんね?玲央に抱きついたりなんかして…」
歩実ちゃんは申し訳なさそうに言った。
「えっ…ううん…」
正直ちょっと嫌だったけど…
歩実ちゃんは私のこと知らなかったんだもん…。
歩実ちゃんを責める権利なんて…私にはないよ…。
「てか…歩実はいつ帰って来たの?」
「あのね…一昨日の夜。それでもうすぐ転入するんだっ」
歩実ちゃんは玲央くんに笑顔でそう言う。
え…?確か同い年だって聞いてるから…
同じクラスになるかもしれない…ってこと?
「あっそうなんだ」
「うんっ!」
ん…??
「あの~…質問してもいい?」
私は、また恐る恐る聞いてみる。
「うん、いいよ!何なに~?」
「歩実ちゃんは…今まで何してたの?」
歩実ちゃんが私に笑顔を向けてくれた。
だから思い切ってそう尋ねる。
「留学だよ。オーストラリアに1年間」
「そうだったんだ。すごいね!」
「そんなー、すごいなんてことないよ!」
歩実ちゃんは顔の前で手を左右に振る。
歩実ちゃんは謙遜してそう言ったけど…私にとっては未知の世界。
だから心の底から…本当にすごいなって、そう思った。