♀ my prince ♂
「っ…」
あの場を離れて…どこに向かって歩いているのか自分でも分からない。
“里原!お前、彼女いんだろ?”
“けど今は…そんなの関係ねぇだろ。”
だけどさっき交わされていた会話が…私の頭の中に何回もよぎっては消える。
「……」
玲央くんが何であんなことを言ったのか…分かってるよ…?
歩実ちゃんを助けるためだよね…?そんなの分かってる…。
歩実ちゃんは玲央くんにとって…大切な幼なじみだもん…。
そんな幼なじみのピンチを…ただ助けただけだよね…?
それは…ちゃんと頭では分かってるんだけど…。
そう思うと涙が溢れ出しそうになった。
「……みぃ?」
「翔くん…」
それと同時…そう呼ばれた気がして顔を上げる。
「どうしたの?泣いてる…」
「えっ…ううん…何でもないよ…?」
「何でもないわけないだろ…?何があった?言ってみ?」
その声はものすごく優しいのに顔は真剣な彼の手が私の両手を包んだ。
「っ…」
何で…何かあったって分かるの…?
もう言わずにはいられないよ…。
辛い…辛いよ…。
「あの、ね…?さっき歩実ちゃんが…男の子たちに囲まれてたの…」
私は俯きながら話し出す。
「歩実ちゃんって…この前みぃが言ってた子、だよね?」
「うん…でね…“どうしよう?助けなきゃ…”って思ってたら…玲央くん、が来てっ…グスン…ッ」
「うん……そんで…?」
その場面を思い出すだけで胸が締めつけられて涙が溢れ出してしまう。
だけど翔くんは…優しくそう言いながら私の涙を指で拭ってくれた。