♀ my prince ♂


【玲央 side】



―20分前。




「…歩実、大丈夫だった?」



「うん、大丈夫。それより…これダメじゃん」


歩実はそう言いながら肩に回していた俺の腕を退けた。



「あっそっか。ごめん…」



「ううん。でも未亜ちゃんには悪いけど…ちょっと嬉しかった」



「え?」




何だよ、それ。どうゆう…。




「私ね…玲央が好きなの。ずーっと前から」


そう思った時…歩実に突然そう告げられた。



「え…!?」



「けど留学して帰ってきたらあんなに可愛い彼女がいて…正直、すごいショックだった…」


次の瞬間に彼女は俯いた。




それじゃあ…未亜ちゃんと初めて会ったあの時…相当ショックを受けたってこと…?




「“私の方がずっと前から知ってるのに…何であの子のとこ行っちゃったの!?”って…」



「歩実…」



「でもね…?2人の邪魔をするつもりなんて…今は全然ないの…。ただ玲央に…好きって気持ち、伝えたかっただけだから…」


今度は俺を見ながら歩実は話し続ける。




歩実は…ずっとそんな風に思ってたんだな…俺のこと…。




「それに私、玲央も好きだけど…未亜ちゃんも好きだから、ちゃんと友達になりたいんだ…」



「そっか…ごめんな?歩実…」



「もう謝んないでよ、悲しくなるでしょっ!?それと…玲央にお願いがあるんだけど…」



「何?」



「玲央のこと………好きでいさせて…」



「え…!?歩実は…ほんとにそれでいいわけ?」


そう言う歩実に俺は驚いた。



「だって…すぐには諦められないんだもん…ずーっと…玲央が好きだったんだよ…!?」



「……」




俺が気づかなかったせいで…歩実の時間、奪っちゃってたんだもんな…。




「じゃあ…俺はもう何も言わない。歩実の好きにしたらいいよ」



「ありがとう…玲央。」


最後に見た歩実の顔はどこか清々しい表情な気がした。




未亜ちゃんが気にしてたこと…まじで当たってたんだな…。
歩実…本当にごめんな…?お前の気持ちに応えてやれなくて…。





< 158 / 203 >

この作品をシェア

pagetop