♀ my prince ♂
【玲央 side】
―20分前。
「…歩実、大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。それより…これダメじゃん」
歩実はそう言いながら肩に回していた俺の腕を退けた。
「あっそっか。ごめん…」
「ううん。でも未亜ちゃんには悪いけど…ちょっと嬉しかった」
「え?」
何だよ、それ。どうゆう…。
「私ね…玲央が好きなの。ずーっと前から」
そう思った時…歩実に突然そう告げられた。
「え…!?」
「けど留学して帰ってきたらあんなに可愛い彼女がいて…正直、すごいショックだった…」
次の瞬間に彼女は俯いた。
それじゃあ…未亜ちゃんと初めて会ったあの時…相当ショックを受けたってこと…?
「“私の方がずっと前から知ってるのに…何であの子のとこ行っちゃったの!?”って…」
「歩実…」
「でもね…?2人の邪魔をするつもりなんて…今は全然ないの…。ただ玲央に…好きって気持ち、伝えたかっただけだから…」
今度は俺を見ながら歩実は話し続ける。
歩実は…ずっとそんな風に思ってたんだな…俺のこと…。
「それに私、玲央も好きだけど…未亜ちゃんも好きだから、ちゃんと友達になりたいんだ…」
「そっか…ごめんな?歩実…」
「もう謝んないでよ、悲しくなるでしょっ!?それと…玲央にお願いがあるんだけど…」
「何?」
「玲央のこと………好きでいさせて…」
「え…!?歩実は…ほんとにそれでいいわけ?」
そう言う歩実に俺は驚いた。
「だって…すぐには諦められないんだもん…ずーっと…玲央が好きだったんだよ…!?」
「……」
俺が気づかなかったせいで…歩実の時間、奪っちゃってたんだもんな…。
「じゃあ…俺はもう何も言わない。歩実の好きにしたらいいよ」
「ありがとう…玲央。」
最後に見た歩実の顔はどこか清々しい表情な気がした。
未亜ちゃんが気にしてたこと…まじで当たってたんだな…。
歩実…本当にごめんな…?お前の気持ちに応えてやれなくて…。