♀ my prince ♂
―そして今現在。
「っ…!!!」
何やってんの!?あいつ…!!
俺は“見たくなんてない光景”を見てしまった…。
それは未亜ちゃんが三波に抱き締められている姿。
「……」
俺は誰にも気づかれないよう二人の会話が聞こえる所まで近づいていく―。
「――…玲央くんが好き…」
え、何…?告白されたの…?
「分かってるよ。てか痛いくらい身に沁みてる…“みぃは本当に…里原が好きなんだな”って…。だけどそれでも…俺、みぃのこと…全然諦められねぇよ…」
「翔くん…」
それ…さっきの歩実と全く同じだ…。
彼女に言っているはずなのに…なぜか自分の胸にも突き刺さるものを感じた。
「だから……好きでいさせてほしい…」
「ぇ…!?翔くんは…それでいいの…?」
それも同じ…。つか…歩実と似すぎだろ…。
「いいよ、全然構わない。それにさ…すぐ諦めろっていう方が絶対無理だし…」
「そっか…。
翔くんがそう言うんなら…私、何も言わない…っていうか言えないよ…。
だってそれが…翔くんの素直な気持ちってことなんでしょ…?」
そう言った彼女は“やつ”から離れて悲しく笑う。
「うん…。みぃ……ありがとな…?」
「ううん…ごめんね…?ごめんね、翔くん…」
「みぃ~…そんな謝んなよ!悲しくなるだろ?」
「でもっ…なんて言ったらいいのか…分かんないん、だもん…」
「……。
そんなの…何も言わなくていいよ。みぃは…笑ってるだけでいい…。
それだけで…たったそれだけで…ほんとに大丈夫だから…」
そんな二人を残し…俺は足早に部屋へと向かった――。