♀ my prince ♂
―それから数日。
「ごめんね?急に呼び出して」
私はまた…ある男の子に呼び出された。
「ううん…」
自惚れているわけでは決してないけれど…
今の私にはこのあとの展開が読めてしまう。
「俺…鈴村さんが好きなんだ。」
ほら…やっぱりそうなんだ…。
「ごめんなさい…私、付き合っている人がいるの…」
「…里原でしょ?そんなの分かりきってるよ。ただ…伝えたかっただけ」
「本当に、ごめんなさい…」
そう言って頭を下げた。
「いいって、謝んないでよ。けど…1つだけ、お願い聞いてもらっていい?」
「“お願い”って…?」
どんなものかが分からず首を傾げる。
「心配しないで、簡単なものだから」
「そうなの…?」
「うん。だから…いいかな?」
「ぇ…うん…」
けど内容は教えてはくれず…とりあえず、そう返事をした。
何かは分からないけど…それぐらい、いいよね…?
だって私は…
この人の気持ちには答えられないんだもの…。
大事な大事な…“あの人”がいるんだから…。
一瞬でも、そう思ったのが間違いだった―。
「……ハグしていい?」
「えっ…!?」
彼の発言に私は目を丸くした。
ちょ、ちょっと待って…?私…そんなことしていいの…!?だって私には…っっ
そう思っている間にも彼は私との距離を縮め始める。
「っ…」
どどどど、どうしよう…!?分かんない…怖いっ…助けて…っ!!
「……玲央くん…っっ!!」
“彼”の名前を叫び目をギュッと閉じ下を向いた。
すると―…、
「っ…!」
誰かに手首を掴まれ身体がグッと横に動く。
「ごめん、この子…俺のだから」
さっきとは違う男の子の声…
だけど私が一番、安心できる声…