♀ my prince ♂
「……」
私は恐る恐る目を開ける。
そんな私の目に映るのは…見覚えのある大きな背中―。
「……玲央くん…」
「だからもう…彼女に近づかないでくれる?」
そう言う玲央くんの表情は分からない。だけど…
「っっ」
相手の男の子は怪訝な顔を浮かべ舌打ちをして…その場を立ち去っていった。
「玲央くん…?」
その背中に問うと、すぐさま私に振り返る。
「れ…っっ…」
もう一度、名前を呼ぼうとしたけれど…
顎を掴まれて、そのまま唇を奪われた。
玲央くんは怒っているのかもしれない…。
その証拠に…
「んっ…っっ…!!」
いつもより荒々しく私の口内を侵す―。
「ンんっ…ふぅ…っ」
そんな玲央くんのキスに耐えきれなくなって私は彼の服をキュッと掴む。
すると、それに気づいてくれたらしい玲央くんがやっと唇を離してくれた。
「…玲央くん…」
再び名前を呼ぶと今度はギュッと抱き締められる。
「未亜ちゃん…大丈夫だった…?」
耳元で聞こえたその声は…いつもの優しい声。
「うん…」
「そっか…よかった…」
呟くようにそう言うと更に力を込めて抱き締める。だけど…、
「何ですぐ、来てくれたの…?」
これが私の最大の疑問。名前を呼んで数分と経っていないはず。
「実は…未亜ちゃんを探してたんだ。さっきのあいつに呼び出されたって聞いて」
「え…」
探してた…?私を…?
「そしたら未亜ちゃんの叫び声が聞こえてきて…飛んできたんだ。あいつって…いい噂、聞かない奴だから」
「え…?」
そう、だったんだ…だからそんなこと…。
「ごめんなさい…心配かけちゃって…」
「いいよ、別に。無事だったんだから」
「うん…ありがとう…」
そう言って私も玲央くんを抱き締めた。
玲央くん…本当にありがとう…。
でもさっきの玲央くん…本物の王子様みたいだったよ…?