♀ my prince ♂
―数十分後。
宮崎さんの運転する車は無事に空港へと辿り着いた。
「んん~…」
まだ来てないのかな…?
搭乗口付近までやって来た私は辺りを見回してみる。
だけど…彼らしき人物は、まだいなさそうだった。
「どうしよう…?あ…っ」
あそこで座って待ってよっと。
近くにベンチを見つけて、それに座り彼の帰りを待つことにした。
玲央くん、まだかな…?確かもうすぐ着く時間だったよね…?
「っ…」
って…あ、どうしよう…っ!?
緊張してきたかも…。どんな顔したらいいんだっけ…?
うぅ~…もう全然分かんないよー…。誰か教えて…っ!!
もうすぐ会える彼のことを想い顔を両手で覆い混乱までしてきた。
その時―…、
「未亜ちゃん…?」
私のことをそう呼ぶ…聞き覚えのある声にハッとして声が聞こえた方に振り向く。
「え!?あっ……玲央くん…っ」
私はそう言って思わず立ち上がった。
「っ…」
目の前にいる玲央くんの格好は…
革靴にグレーの細身のスーツがバシッと決まっていて、
紺のネクタイを緩めに締めている。そして、Yシャツは…
「それ…私があげたやつ…?」
指を差しながら聞いてみる。
「そうだよ。…どう?」
「うん…すっごく似合ってる…っ」
彼は、あの頃と全然変わらない笑顔でそう言ってくれた。
その姿に嬉しくなった私も満面の笑みで彼に答える。
実は今、彼が着ている“水色のYシャツ”は…
留学一年目だった頃のお誕生日に私が彼にプレゼントしたもの。
夏凛ちゃんたちにも協力してもらって必死で選んだんだっけ…?
その頃のことを思い出すと何だか懐かしくなってしまった。
だけど…私がこれを着た彼の姿を見るのは今日が初めて…。
「じゃあ…もう行こっか?」
「うんっ」
そして…手を繋いで歩き出した―。