♀ my prince ♂
「…っ」
その瞬間、何でか分からないけど…涙が頬を伝った。
だけど私の答えは…迷うことなく決まっている…。
「……はい…っ」
私は噛みしめるように返事をした。
その様子を見つめていた彼は、そっと私の涙を指で拭う。
そして、ふわっと笑い…その指輪を左手の薬指にはめた。
今、私の薬指には…キラキラと輝く婚約指輪。
そして旅立つ前日にくれた…彼とのペアリング。
婚約指輪の方が宝石なんかもついていて豪華で、より一層輝いているけれど…
私の目には、シンプルなシルバーリングも同じぐらいキラキラと輝いて見える。
それにあの時の…
“いつか絶対…婚約指輪に変えてみせる…”
あの言葉を…現実にしちゃうんだね…?
そんな玲央くんって…本当にすごいよ…。
「…みぃ。」
「へっ…!?」
初めて呼ばれた呼び名に驚きながら彼を見上げる。
ちゅ…っ
「っ…!」
すると優しく触れるようなキスをされて…
そのまま、彼の腕の中に抱き締められた。
「俺…絶対幸せにするから。…未亜のこと。」
「うん…」
「だから俺に…ずっと、ついてきてくれる…?」
「うん…っ」
その言葉を噛みしめるように頷き私も彼の背中に手を回した。
これから玲央くんは…“私だけの王子様”になるんだよね…?
私…それだけで嬉しいよ…?すっごく、すっごく嬉しいの…っ
もうこれ以上、なんて言ったらいいのか分からない…言葉が見つからないよ…。
「……」
しばらくして…同じようなタイミングで視線が絡む。
すると彼が私のおでこに自分のをコツンと合わせる。
それに少し笑いあったあと…
「っ…」
今度は唇同士が重なった――。
そんな私たちの姿を夜空に瞬く星たちだけが…
静かにそっと見守っていた――…。
【END】