♀ my prince ♂



―それから。


何事も起こらず入学してから一ヶ月が過ぎようとしていた。
そして今日も、いつも通り学校が終わり帰る時間となった。




「ごめん!未亜ちゃん。今日一緒に帰れなくて」



「ううん。私も用事あるし。」



「じゃあ、あとで部屋行ってもいい?」



「うん、いいよっ」



「ありがとう。じゃあ、あとでね」



「うん。バイバイっ」


そう言うと夏凛ちゃんは帰って行った。




…さて。私も早く用事終わらせに行かなきゃ。




そう思い階段を降り1階へと辿り着く。




ん……??




だけど、その階段下に誰かが隠れているようだった。
その誰かが気になった私は、そこへ近づいていく。



「…玲央くん?」



「しーーっ!」


そこにいた人物は玲央くんで彼は小声でそう言いながら人差し指を口に当てた。




えっ…何でだろう…?




そう思った時。




『玲央様~っ』



『どこですか~!?!?』



そんなファンの女の子たちの声が遠くの方で聞こえてきた。




もしかして、これかなぁ…?
玲央くん…あの子たちから逃げてたとこなんだ…?




“王子様って大変なんだなぁ”って漠然と思っている間にも、
その声たちは段々と近づいてきていた。



すると―…、




グイ…ッ




「…っ!……っ…っっ!!!」


急に玲央くんが私の腕を引っ張り、そのまま引き寄せて…
その場に座っていた玲央くんの脚の上に座らされ…


口を玲央くんの手で塞がれた――。




えっ!?な…何…っ!?!?




突然の出来事すぎて私の頭の中はパニック状態。
驚きの言葉しか浮かんでこなかった。




『玲央様いないね~』


『もう帰ったのかなぁ?』



そんな声が近くでたくさん聞こえてきて…
その声たちは段々と遠くなっていった――





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