♀ my prince ♂
―そのあと。
二人並んで廊下を歩き寮内にある休憩室までやって来た。
そして、一番奥にあるバルコニーへと足を踏み入れる。
「うわぁ~…今日、星キレイだねっ」
夜空を見上げた私はそう言う。
「そうだね。てかこっち…座ろ?」
「うん。」
玲央くんの言葉に促されて二人でベンチに座った。
だけど…ここで疑問が一つ。
「ねぇ、何でここ…ベンチが一つしかないの?」
なぜか…このバルコニーにはベンチが一つしかない。
別に一つしか置けないようなスペースでもないのに…。
「あぁ~…そっか。未亜ちゃん、知らないんだよね…?
ここはさ…“Lovers Chair”って言って…恋人たちが愛を語り合う場所、
として…この寮に代々、語り継がれてるベンチなんだよね。」
「…ラバーズ……チェアー…?」
てか今…!
“恋人たちが愛を語り合う場所”とかなんとか…っっ!!!!
「え、あっ…でも…」
「…俺たちは違うじゃんって?」
「ぇ…うん…」
焦ってそう言う私を見て玲央くんがそんな言葉を発した。
「まぁただの伝説みたいなもんだし…そんなに気にしなくてもいいよ?」
「え、玲央くん…?どうしたの?」
玲央くんはそう言うと立ち上がり…
ここと休憩室を繋ぐ窓の方へと向かっていく。
「ん…?これ、閉めようかなって。」
玲央くんはそう言い備え付けてあるカーテンを閉めた。
「えっ……何で?」
「ん~…。ここにいるとこを誰かに見られちゃ…未亜ちゃん気まずくなるかと思って。」
そう言いながら、またベンチに座る玲央くん。
え…?
「…どうして?」
「え、だって…ここの噂って、みんな知ってるはずだし…それに万が一誰かに見られたら…一瞬で他の子にも広まっちゃうしね。」
そう言ったあと玲央くんは空を見上げた。