♀ my prince ♂
―それから。
今まで住んでいた部屋から全ての荷物が届き、それの片付けに入った。
そうすると、あっという間に時はすぎ…親友との“約束ごと”を果たしに行く。
部屋を出る時、玲央くんからは…
『帰ってきたら俺の部屋…来てくれない?』
そう言われたけれど。
そして今―。
「あのね、未亜ちゃん…」
「なに~?」
夏凛ちゃんのお部屋にお邪魔している。
“部屋で話したいことがあるから”って言われて…。
「私…渡部くんが好きかも…」
「へっ…亮くん…?」
「うん…」
そう言った夏凛ちゃんは俯いた。
こんな顔する夏凛ちゃん…今まで見たことない…。
「何かさ…やっぱり王子様なの。私だけじゃなくって、みんなに優しいし…
もちろん、それは昔から変わってないんだよ?知り合った時からそうだった。
でも私…“王子様なんて好きにならない”って思ってたのになぁ…。
どこで歯車、狂っちゃったんだろう…?ファンが多すぎて辛いよ…」
「っ…」
夏凛ちゃん…。
「えっと…こうゆう時って、どうしたらいいんだろう?んーと……全然思いつかない…」
「…あはははっ」
私が慌てると夏凛ちゃんは笑い出し私を見る。
「未亜ちゃんが悩まなくてもいいよ」
「えっ……あ、そっか」
「うん」
「でも…私に出来ることがあったら何でも言ってね?私…夏凛ちゃんには助けてもらってばかりだから…私も夏凛ちゃんの力になりたい…」
ほんとにそう思ってるんだよ…?
玲央くんのことで分からなくて悩んでいた時…夏凛ちゃんはいっつも私の話を聞いてくれた。
これが“恋”で“好き”っていう感情だって気づく“きっかけ”を与えてくれたんだもん…。