♀ my prince ♂




―それから。


水族館をあとにしてしばらく。




「ぁ…玲央くん!あれ!食べたいっ」


私は“あるもの”を指さす。



「あれって…?あぁアイス?いいね、そうしよう」


玲央くんも私が見つけたものを発見してくれた。


私が指さしたものとは大型車で移動しながら販売をしている移動式のアイスクリーム屋さん。
実は私…ここのアイスが小さい頃から大好き。見かけては、お母さんにおねだりしたっけ…?




「……食べる?」



「へ……!?」


真向かいの椅子に座る玲央くんの言葉で私は我に返った。



「何か…さっきから見つめてる気がして」



「そう、だっけ…?」



「うん。めっちゃ視線感じたよ?」




私、そんなに見つめてたのかな…?全然記憶にないんだけど…。




「……はい。あげる。」


玲央くんはアイスをすくい、そのスプーンを私の方に差し出す。



「えっ…でも……恥ずかしい…」



「いいから。てか…早くしないと溶けるよ?」



「!」



そ、そうだ…!このままだと溶けちゃうよ…っっ


それはやだ…!!けどっ…でもでも…っ!!
やっぱり恥ずかしいよ、こんな所で…。




「未亜ちゃん…?どうする?」



「っ…!」


頭の中で葛藤を繰り広げていた時に悪魔の囁き。
その顔は色っぽくって…さらに私を困惑させる。




「…。」


結果。その誘惑に勝てなかった私は、それを口の中に含んだ。



「……どう?」



「うん、美味しいっ!」


味の感想を聞かれて満面の笑みで答える。




やっぱりここのアイスはどれも美味しい~っ!!




「ふふっ…ほんと可愛いね?まぁいっつも可愛いけど」



「……っ」



そして…容赦なく降ってくる“甘い言葉”


その言葉に私は何の反応もできない。というか…
切り返しの方法が、まだ全然分からないの…―。





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