♀ my prince ♂




「っ……ヒック…ッ」


だけどその間も私の涙は溢れ出す一方で止む気配がない。




玲央くん…嫌だよ…。絶対に嫌…。




『俺…そんなことしないんで』


すると…そう言う声が耳に届き夏凛ちゃんも私もその場に立ち止まる。
そしてゆっくりと…ステージに目を向ける――。




「…れお、くん…」


私の目に飛び込んできたのは…マイクを持っている玲央くんの姿だった。



「そう言われましても…これは決まりごとなんですけれど…」


司会者がおどおどした様子で玲央くんに話しかける。



『何ですか?その決まりごとって。俺にはそんなの関係ない話ですから。それにそんなことをしたら…すごく悲しむ子がいるので。』


玲央くんはマイクを使って力強くそう言った。



「…っ」




玲央くん…。




「……」


そんな玲央くんは何かを探すように会場の人たちを、くまなく見ているよう。




「っ…!」



やがて…彼と私は目が合った―。




それからはもう…スローモーションかのように感じた。
マイクを司会者に投げつけてステージから降りてきて…


私の目の前へとやってきたのだから―。




「…ありがとう、小嶋」



「別にあんたのためじゃないけど。」



「分かってるよ、そんなん。でもありがとう」



「…ううん」



二人がそんな会話をしていても…私には玲央くんしか見えていない――。
だって、さっきの玲央くん…本当の本当に…王子様みたいだったから…。




「っ…!」


玲央くんを見ていたのも束の間。
私はいつの間にか彼に腕を引っ張られてステージ中央へと足を進める。




ぎゅ…っ




「え…!?れ…れお、くん…?」




ええええ…っ!?どど…どうゆうこと…!?




そして、たくさんの人の視線が集まる中いきなり抱き締められた。
いやでも注目されている場所での行動に私の頭の中はパニック寸前。





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