朧月


男が去ったのを見送ると、携帯電話を取り出して空に電話をする。



「もしもし。」

「もしもし、空?あたし振られちゃったよー。今から行ってもいい?」

空は私に聞こえるように、わざと大きな溜め息をついた。

「振られたって、あんた。好きでもなかったのに。」

「うん、まぁそうなんだけど。今、家?」

私は今さっき振られた人間とは思えないくらい元気な声を出していた。

「そうだよ。」

「じゃあ、行くね。」

「はいはい。」


電話をきると、すぐに空の家に向かって歩き出していた。

好きじゃなければ付き合わなければいい?

私は寂しいんだ。

1人でいるのは、あの人を思い出すから

とても、とても寂しいんだ。
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