朧月


「やべぇ。寝てた。」


「早く来い!今からならまだ間に合う!」


僕は慌てることもなく、着慣れないスーツに腕を通した。

引き出しに閉まってある1万円札を数枚つかむと、それを乱暴に内ポケットへ入れた。


まだ見慣れない部屋のテーブルにあった鍵を掴むと、革靴を出し忘れていたことに気が付く。


「何処にしまったっけなー…」


ひとりごとを言いながら、まだ封がされているダンボールをひとつひとつ開けていくと、3つ目で革靴を見付けた。
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