朧月


「すみません。」

空も同じことを言う。


そんな何気ないことは気にも止めていなかった。


数メートル歩いたとき、空が後ろを振り返ると
「あの人まだこっち見てる。」
そう言った。


それを聞いて振り返ると、確かに男の人はまだこちらに視線を送っている。


「どんくさいね。」


バカにしたように鼻で笑うと、私たちは入学式へと向かった。
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