朧月



ピンポ-ン




こんな時間に誰だろう。宅急便かな。


私は一応、引き出しから印鑑を取り出して受話器を上げる。


「はい。」


「…あの、俺。同じ大学の桜沢陸って言うんですけど…。」

同じ大学の人が何で?
あたしまだ空以外に友達いないのに。


「…はぁ。」


「…あ、決して怪しい者ではなくて。あの!今朝あなたの友達にぶつかった…」


「あぁ!」


私はそう言って受話器を元の位置へ戻すと、印鑑を持ったまま玄関を開けた。
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