朧月
ドアを開けると、確かにこの前の男の子がいた。
「手短にお願いします。」
部屋にいる彼に聞こえないように声のトーンを落とす。
「あ。じゃあ、次の日曜日飲みに行きましょう。」
陸くんは背筋をピンと伸ばして私の顔色を伺う。
「分かった。じゃあ、日曜日の夕方来てください。」
陸くんの返事を聞く前に私はドアを閉めた。
部屋に戻ると彼がタバコ吸いながら優しい表情で話しかけてくる。
「誰だった?」
「新聞の勧誘。しつこくて。」
嘘の言葉がサラサラと出てくる自分に寒気がする。