朧月

そうやって壁を作っていれば楽だった。

もう誰も愛さなければ傷付かない。


"好きだよ"と言われれば
"好きだよ"と答える。

形だけ愛し合っていれば幸せなんだ。

愛し愛される喜びを知るから、離れることが怖くなる。

求めるから期待は膨らむし、求められるから愛おしいと思ってしまう。

握った手はいつか離れてしまうものなんだから。

"絶対"なんてものはないんだから。



ずっと、そう言い聞かせてきたんだ。

< 47 / 48 >

この作品をシェア

pagetop