朧月
ディスプレイに写し出された"陸"の文字。
ナイスタイミングだ。
「壱!やっと出た!」
「おぉ。どうした?」
「いや、ちょっと暇だから。」
陸を使ってこの場を逃げよう。
「マジで!?すぐ行くよ!今、家?待ってろ!」
「何だ?お前。別にすぐ来なくていいよ。」
「わかった、わかった。今から行ってやるって。」
「あぁ。お前今、女といんだろ。」
陸は受話器から声がもれないように声のトーンを落とした。
「おぉ。じゃあ、すぐ行く。」
少し悲しい表情を作って、エリを見ると
「友達?急用?」
彼女もまた悲しい顔をして言った。
「ごめん、ちょっと呼び出されて。すぐ行かなきゃならないんだ。」