SINGLE
浮気、ギャンブル、浪費、暴力。

晴久は全てをこなす、ある意味マルチな男だった。

一方博愛は、怒らず、無口で一途な女だった。

噛み合わせは良かったのだ。

一方的に博愛の我慢だったのだが。

博愛は晴久の優しさを知っていた。

だから別れなかった。

晴久も博愛の強さを知っていた。

だから別れなかった。

3年の月日に終止符を打つ覚悟は半ばだった。

晴久はきっと引き留めにくる。

美嘉を連れて行かれる位なら、出て行かない方がマシだと思っていた。

晴久に虐げられて、香奈にいびりたおされていたとしても。

出て行く覚悟が半分だけでも出来たきっかけは、昨夜のとある事件だ。

晴久の中途半端さと、香奈の意地の悪さに博愛が呆れたのだ。

そして珍しく怒りが爆発した。

美嘉が泣いているのを、晴久は放置していた。

美嘉は博愛しか駄目なのだ。

分かっているかのように、娘は父親を嫌っていた。

父親の母親すら嫌っていた。
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