tears town
時間が止まっているようなマンションの部屋のなかであかねはまるで絵の中にいるように景色と同化していた。


静かな部屋に悲しげにたたずみ、煙草の煙だけが空に向かい揺らめく。そんな静かなときがしばらく流れた。



そのとき、不意にあかねの手元の煙草の灰が床へと落ちた。



絵画のような世界が急に動き出した、その瞬間に彼女はハッと我に帰った。



あかねは慌てて床に落ちた灰をティッシュで拭き取ると、せわしく煙草の火を消してクローゼットを開けて着替えだした。
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