Sweet Mother's Day
「相談もせずにそんなことしたの?」
黙る私に、佑くんは厳しい顔のまま続けた。
「だ、だって。……相談する時間なんてなかったじゃない」
罪悪感と焦りでとにかく言い訳を告げる。
でも実際、それが事実だった。
一緒にいるのが朝の慌ただしい時間だけでは、ゆっくり相談することは難しかったのだ。
「……分かったよ」
諦めに似た表情で静かにそう言って、佑くんはそのまま仕事に行ってしまった。
胸の奥にザワザワした不安感が残る。
佑くんがこんな風に怒るのを、私は初めて見た。
いつだって優しくて、ムッとはしても無言になることはなかったのに。
その日は日曜日でせっかく翔太と一緒のお休みだったのに、全然楽しめなかった。
佑くんがちゃんと帰ってくるか不安で、夜もなかなか寝付けない。
玄関のドアが開いた音に安心して、でもどんな顔をして迎えたらいいか分からなくて、布団にもぐりこんで顔を隠した。
「……麻由、起きて」
予想外に佑くんが声をかけてきた。
怒っているかと思ったのに、その声は優しく聞こえたから、私は慌てて起きあがった。
「うわ、驚いた。寝てたわけじゃなかったんだな」
彼の表情に、声に、安心する。
良かった。いつもの祐くんだ。
「うん。起きてた」
「あのさ、麻由。朝の話だけど」
「……ごめんなさい。相談もせずに勝手に決めちゃって」
素直に謝れたのは、彼が先に優しい声を出してくれたからだろう。
彼は困ったように笑うと、私の横に座りこんだ。