Sweet Mother's Day

 電車が実家のある駅に着いた。

今住んでいるところより都会で、デパートなんかも充実している、学生時代を謳歌した街だ。
私はさっそく駅ビルに入って、ウィンドウショッピングを始めた。

昔好きだったブランド。
華やかなアクセサリー。
何を見ても、値段に目がいっちゃう自分に苦笑する。

可愛いし欲しいなとも思うんだけど、この値段でと思うと手が出ない。

私は手に持っている鞄に目をやって、その中にしまった一万円札に想いを馳せた。

未だに佑くんの方がお給料は少ないのだ。
それなのに、彼が私にお小遣いをくれた。楽しんでこいよと言って。

「給料といえば、……それでケンカもしたなぁ」




翔太が保育園に入ってひと月たったころ、預金通帳を見ながら佑くんが不思議そうに言った。

「なあ、翔太の保育代って、いつ引き落とされるんだ?」

「ああ、それなら私の口座から落ちるようになってる」

何の気なくそう言ったら、佑くんの顔がこわばった。

「……なんで?」

私のお給料の方が高いから。

それが理由だったけど、厳しい彼の顔を前にしては言えなかった。

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