Sweet Mother's Day
電車が実家のある駅に着いた。
今住んでいるところより都会で、デパートなんかも充実している、学生時代を謳歌した街だ。
私はさっそく駅ビルに入って、ウィンドウショッピングを始めた。
昔好きだったブランド。
華やかなアクセサリー。
何を見ても、値段に目がいっちゃう自分に苦笑する。
可愛いし欲しいなとも思うんだけど、この値段でと思うと手が出ない。
私は手に持っている鞄に目をやって、その中にしまった一万円札に想いを馳せた。
未だに佑くんの方がお給料は少ないのだ。
それなのに、彼が私にお小遣いをくれた。楽しんでこいよと言って。
「給料といえば、……それでケンカもしたなぁ」
*
翔太が保育園に入ってひと月たったころ、預金通帳を見ながら佑くんが不思議そうに言った。
「なあ、翔太の保育代って、いつ引き落とされるんだ?」
「ああ、それなら私の口座から落ちるようになってる」
何の気なくそう言ったら、佑くんの顔がこわばった。
「……なんで?」
私のお給料の方が高いから。
それが理由だったけど、厳しい彼の顔を前にしては言えなかった。