halcyon
「じゃあ僕は、そろそろ帰るね。」

そう言って車の時計を指差す。

「そうね、少し遅くなったわね。じゃあ、また明日学校でねっ、ソラ。」

僕は、その言葉で先生と生徒の関係だという事を思い出し、罪の意識に駆られた。

「それじゃあ、また明日ね、ユイ。」

僕は少しでも早く、その場から逃げようとしていたんだ。

逃げたかった。
少しでも早く…

こんな可笑しな世界から。

「―ッ…」

僕の左手がドアを開けようとした時、右腕がグイッと引っ張られるのを感じた。
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