プラトニック・オーダー
ふと、忘れかけていた過去の思い出が蘇る。
たいしたことではないのだ。
だけど、それが私の劣等感の原因である事は否定できない。

キラキラしている人たちを、眩しく感じる様になったのは……。


 高校生の頃だった。
私はよく言えば大人しい、悪く言えば社交的ではなく、クラスで浮いていた。
友達は何人かいたけど、女の子同士でわいわい騒ぐよりは本を読んだりするほうが好きだった。

高校二年の頃、クラス替えで何人かいた友人とクラスが離れて、私はますますクラスから浮いていた。
特にいじめや仲間はずれがあるわけではなかったけど、休み時間は仲のいい友達のクラスにいったりしているうちに段々と浮いていった、という感じ。

そういう態度を取っていた私にも、多分に問題はあったのだと思う。
だけど、当時の私は新しい人間関係を構築するという考えには至らず……。

「木崎さん、俺、君のことが好きなんだ」

そう言われたのは、クラスでも特別目立つ男の子にだった。
明るくて、誰にでも優しくて、確かサッカー部のエースだった。それは後で友達から聞いたことなんだけど。

兎に角、そういう男の子から告白された。

「……ごめんなさい」

私は、あまり彼のことを知らなかった。
確かによく話しかけてはくれていたけど、それは今日の宿題やってきた?だとか、次の移動教室の場所どこ?だとか。
よくあるクラスメイトとしての会話だと思っていたし、私は彼がどういう人間なのかも知らなかった。

だから、断った。

彼はとても残念そうにしてくれていたけど、それ以上追求することも、騒ぐことも。
まして、今までと態度を変えることもなかった。

 まさに、彼はキラキラしている人だったのだと思う。
鈍かった当時の私はわからなかったけど、憧れている女の子も多かったのだろうか。

―……なんか、フッたらしいよ?

そんな陰口が立ち始めたのは、ある意味でしょうがないのかもしれない。

―……えー、生意気~。

生意気。確かにそうなのかもしれない。
私にだけ聞こえるか聞こえないかの大きさの陰口。

―……っていうか、全然美人じゃないじゃんね。つりあってないよ。

ドキリとした。
そういう事を思うのか……とびっくりしたし、納得してしまったのだ。
私は確かに目立たない。
キラキラと輝いている人たちとは、つりあわない。

呪いの様に自分に言い聞かせてしまうようになったのは、多分あの頃からなのだ。
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