プラトニック・オーダー
「大丈夫ですか?」
心配そうな声に、私は思考を現実に引き戻された。
いつの間にか考え込んでいたようだった。
私は声を掛けてきたリエに微笑みかけると、頷いた。
「うん、ごめんね。ぼーっとしてた」
「もう、誠二さんが心配するのわかるなぁ。っていうか、薫さんって美人なのにどこか抜けてて、多分そういうところが男の人もほっとけないのかも!」
「美人……じゃないよ。ホント、言われたことないし。むしろ……」
言いかけて、やめておく。
こんなことを言っても、彼女たちを困らせてしまうだけだ。
「あー……もしかして、薫さんってあんまり褒められなれてない感じです?」
ユウが首を傾げてたずねてきた。
私はぎこちなく頷くと、苦笑いを浮かべた。
「えー、こんな美人なのに?っと、また薫さんを困らせちゃうか!」
リエが笑うと、エミカがいたずらっぽい笑顔を浮かべて同意するように頷いた。
「あれですよ~、そういう時は、ありがとうって笑顔で言ったほうが素敵ですよー」
「そ、そういうものかな?」
「そうですよ!男の人は知らないけど、女同士でお世辞とかないじゃないですかー。薫さんは、もっと自信もちましょうよ」
エミカが親指を立ててウインクしてみせる。
私は面食らって、三人を順番に眺めていた。
「さ、練習練習!薫さん、ホント美人ですね~」
酔いが大分まわってきたのか、リエが笑顔で言った。
「あ、ありがと……」
照れくささで頬が熱くなる。
多分、笑顔はひきつっている気がする。
「もー、そんなんじゃダメですよー」
きゃっきゃとはしゃぐ三人に気おされつつも、私はいつものような息苦しさが大分消えているのに気がついていた。