プラトニック・オーダー
私が尋ねると、電話の向こうの沙由は何かに戸惑う様に言い淀んでいるようだった。
「言わなきゃわからないよ?」
『あの……、先輩にこんなこと相談して、また何かに巻き込むのも迷惑かなって思ったんですけど……』
「うん、大丈夫だから言ってみて」
『……周ちゃんが、全然連絡つかなくて』
「え?それっていつから?」
私は驚いて尋ねた。
沙由は電話口で泣いているのか、震える声で続けた。
『最初は……いつもみたいにバンドに熱中でもしてるのかなって思ってたんですけど。二週間前くらいから、サークルの仲間が私にも電話してきて。もう三週間近くになるって』
「……沙由、電話じゃなんだから一回会おうか。誠二さんのカフェわかる?私今そこにいるから、今日来れる?」
話のあまりの大きさに私も狼狽しつつ、とりあえず沙由を落ち着かせようと冷静な声を出すように勤めた。
『わかりました……すぐ行くます』
沙由はそう言って電話を切った。
私は今出てきたばかりのカフェに踵を返すと、ドアを開いて中に入った。
「あれ、薫ちゃん?忘れ物?」
私たちが座っていたボックス席を片付けていた誠二さんが、驚いた様に顔を上げた。
「いえ、ちょっと沙由と待ち合わせすることになって。あ、そうだ……」
私は思い出したように誠二さんの事を見つめる。
「あの、周二くん。沙由の彼氏くん、よくここにも打ち上げとかで来てましたよね?」
「ああ、周か。そういえば最近アイツ見ないね」
「なんか、三週間くらい前からいなくなっちゃってるみたいで……」
「周が?」
誠二さんも怪訝な顔をしている。
「三週間前といえば……」
誠二さんが、何かを思い出すように顔を顰める。
私はただ、誠二さんを見守ることしかできない。
「……薫ちゃんには、内緒にしていようと思ってたんだけど。ちょうどその頃、勇吾から電話がきたんだよ」
飛び出した名前に、私は小さく悲鳴を上げた。
ここ最近忘れかけてたとはいえ、やはり急には拭い去れない恐怖というものがある。
「ああ……ごめんね。やっぱり言わない方がいいかな」
気遣うような言葉に、私はゆっくりと首を横に振る。
沙由の為に、聞かなくては。
「……うん、それで。内容は、バンドのメンバーの連絡先を教えて欲しい、謝りたいからって内容だった」
「言わなきゃわからないよ?」
『あの……、先輩にこんなこと相談して、また何かに巻き込むのも迷惑かなって思ったんですけど……』
「うん、大丈夫だから言ってみて」
『……周ちゃんが、全然連絡つかなくて』
「え?それっていつから?」
私は驚いて尋ねた。
沙由は電話口で泣いているのか、震える声で続けた。
『最初は……いつもみたいにバンドに熱中でもしてるのかなって思ってたんですけど。二週間前くらいから、サークルの仲間が私にも電話してきて。もう三週間近くになるって』
「……沙由、電話じゃなんだから一回会おうか。誠二さんのカフェわかる?私今そこにいるから、今日来れる?」
話のあまりの大きさに私も狼狽しつつ、とりあえず沙由を落ち着かせようと冷静な声を出すように勤めた。
『わかりました……すぐ行くます』
沙由はそう言って電話を切った。
私は今出てきたばかりのカフェに踵を返すと、ドアを開いて中に入った。
「あれ、薫ちゃん?忘れ物?」
私たちが座っていたボックス席を片付けていた誠二さんが、驚いた様に顔を上げた。
「いえ、ちょっと沙由と待ち合わせすることになって。あ、そうだ……」
私は思い出したように誠二さんの事を見つめる。
「あの、周二くん。沙由の彼氏くん、よくここにも打ち上げとかで来てましたよね?」
「ああ、周か。そういえば最近アイツ見ないね」
「なんか、三週間くらい前からいなくなっちゃってるみたいで……」
「周が?」
誠二さんも怪訝な顔をしている。
「三週間前といえば……」
誠二さんが、何かを思い出すように顔を顰める。
私はただ、誠二さんを見守ることしかできない。
「……薫ちゃんには、内緒にしていようと思ってたんだけど。ちょうどその頃、勇吾から電話がきたんだよ」
飛び出した名前に、私は小さく悲鳴を上げた。
ここ最近忘れかけてたとはいえ、やはり急には拭い去れない恐怖というものがある。
「ああ……ごめんね。やっぱり言わない方がいいかな」
気遣うような言葉に、私はゆっくりと首を横に振る。
沙由の為に、聞かなくては。
「……うん、それで。内容は、バンドのメンバーの連絡先を教えて欲しい、謝りたいからって内容だった」