プラトニック・オーダー
七章 ホームパーティ
私は料理が好きだった。
作るのが好きなのはもちろんだけど、振舞う相手が好きなものや、どんなリアクションをとってくれるのかとか。
そんなことを考えながら、色々工夫していく工程が楽しい。
頑張って作った料理をおいしいって食べてくれるのはとても嬉しいし、次も頑張ろうっていう気持ちになる。
毎週土曜日に企画していた私と雪菜の料理特訓に、最近は沙由も加わるようになった。
場所は私の家か、閉店後の誠二さんのお店。
私の家だと主に家庭料理中心で私が教える形になるけど、誠二さんのお店では本格的なお菓子作りやちょっと凝ったお料理なんかも教えてもらえる。
こっちは私は助手という感じなんだけど、どっちかというと私も教えてもらってるという方が近い。
父はいい味見相手で、特訓の日を父も楽しみにしていた。
母は夕飯の支度が楽だわ~なんて暢気にお茶なんて飲んでいる。
私の家でやるときは、雪菜も沙由も一緒に食べてから帰る。
二人とも、最初は野菜の皮すら危なっかしくて剥かせられなかったのが最近では大分上達してきた。
「ねえ、そろそろあれやらない?」
今日は和食中心の献立にすることにした。
煮物の味を見ながら、雪菜が楽しそうに言う。
「あれってなんですか?」
沙由が不思議そうに首を傾げる。
「ああ、ホームパーティでしょ。雪菜の旦那さんになるひとが海外転勤だから、それの前にやりたいんだよね」
「そうそう」
相当自信がついてきたのか、雪菜がにこにこと頷く。
沙由も輝くような笑顔を浮かべて頷いていた。
「いいですねー!周ちゃんの快気祝いも一緒にしていいですかー?」
「お、いいねー!」
「雪菜、お鍋吹くよ」
慌てて鍋の火を止める雪菜を苦笑いで見ると、私はカレンダーを見た。
確かに、気がつけば10月。
もうそろそろ年末も近くなって、色々とお互い忙しい時期もやってくる。
「ねえ、せっかくだし誠二さんのカフェ貸しきってやろーよ」
雪菜が出来上がった煮物を大皿に盛りながら声を掛けてくる。
「そうだねえ。誠二さんに聞かないとわからないけど、今度聞いてみるよ。それとは別に、後でメニューどうするか考えないとね」
私もおひたしを小鉢に盛りつつ答えた。
沙由は少しお味噌汁の味付けに手間取っているようだった。
「先輩、これどうですか?」
お豆腐とわかめのシンプルなお味噌汁だけど、沙由らしい優しい味がした。
「うん、おいしい」
「周ちゃん喜んでくれるかな」
「きっと大丈夫だよ。今度保温出来る器に入れて持って帰ってあげたらいいよ」
「そうします!」
沙由は笑うといそいそとお味噌汁を注ぎ始めた。