プラトニック・オーダー
既に炊けていたご飯をよそって、私たちは順に食卓に並べていく。
前の日から私が似ていた角煮も一緒に出した。一晩経って味がよくしみていると思う。

 父が待ってましたとばかりに食卓につく。
母もお茶を淹れて持ってきてくれて、私たちは揃って食卓に並んだ。

「いただきまーす」

週末にこうやって大人数で食卓を囲むのも、楽しいものだった。
父と母に感想を聞いて、それを二人はメモして。
二人ともやる気があるから、私も教え甲斐があったし楽しかった。
仕事を辞めてしまってから手持ち無沙汰な日もあったけど、今ではすっかりこの土曜日が楽しみだった。

「でも本当に、二人とも偉いわねえ」

母が微笑む。
母が言うには、母は結婚するまで料理の類は一切出来なかったらしい。
どちらかというと父のほうが得意で、それはそれは父が苦労したのだとか。

今では料理上手の母からは想像も出来ない。

だから、私にはそんな苦労はさせまいと小さい頃からよく手伝わされた。
幸いな事に、私は料理が好きだったし、おいしいと言ってくれる両親の顔が見たくていろいろやるようになったわけだけど。

「これで嫁にいっても大丈夫ですかねー」

雪菜がのんびりと呟く。
母が大丈夫大丈夫、と笑う。

「私も、周ちゃんが卒業して就職したら同棲したいし頑張るんだー」

沙由もすっかり分厚くなった自分のメモ帳を眺めながら言った。
何度も何度も繰り返し読み返しているんだろう。
元々はスマートだったメモ帳が、今では結構な厚さになっている。

「二人のお相手は幸せ者ねえ」

「母さんも、若い頃こうだったらなぁ」

「まぁ、お父さんったら」

父と母の会話を聞きつつ、私は微笑んだ。
なんだかんだ言いつつ、父はそんな料理の出来なかった母のことも好きだったのだ。

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