ナチュラル
数分後、はなの住むアパートについた。
走った覚えもないのに息が荒れていて、呼吸がし辛い。
「――…っえ…」
思わず声が漏れた。
……どういうことか、はなの部屋のドアノブは、引っかかることなくすんなりと回ったのだ。
「…っはな!!」
ガシャンッという音と共に、乱暴に開いたドアから勢いよくはなの部屋へと上がり込む。
もう理性なんて、あったもんじゃなかった。
もし誘拐なら、殴り飛ばしてやる。
それが金目当てなら、思いっきり。
それが体目当てなら、死ぬほど、だ。
暗闇の中、勘を頼りにはなを探した。
これだから一人暮らしはさせたくなかったんだ。
はなはあんなんだから、危ないことくらい分かっていたのに。
頭の中では今更言っても仕方ないことくらい分かっていても、体はどうしようもないくらいに力んでしまう。
――――と。
「……ハル、くん……」
「――はなッ!」
微かに聞こえたはなの声に俺は勢いよく振り向いた。