ナチュラル


―――と。





「っわ」


抱きついてきたと言うよりは突進してきたに近い勢いで、はなは僕の胸に飛び込んできた。


慌てて体制を立て直そうとするも、こんな暗闇の中で受け止められるはずもなく、後ろにあった壁に倒れかかる。



「っ…ハル、くん…」


「………」









――…心底、ホッとした。




今、はなは僕の腕の中にいる。
息をしている。
泣いている。
僕の名前を呼んでいる。

回された手、密着した体から、体温を感じる。




―――あぁ、温かい。



「……どうしたの、はな」


そっと、泣いている彼女に声をかける。


「……っ…ハルくんがねっ…どこか遠くへ行っちゃうんだ……っ」


そう言えば、さっきもはなは、そう言っていた。
僕がどこかへ行っちゃうって、なんでそんなに確信を持って言ってるんだろうか。


「…っ…やだよっ…ハルくんどこにも行かないでっ…」


はなはそう言うと、僕に抱きつく力を強めて、また泣き出してしまった。


「………どこにも行かないよ」


大丈夫。ずっとはなの傍にいるから。


そう言って頭を撫でると、はなは安心したのか、だんだんと落ち着いてきて、すぐに寝てしまった。





< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop