ナチュラル
―――と。
「っわ」
抱きついてきたと言うよりは突進してきたに近い勢いで、はなは僕の胸に飛び込んできた。
慌てて体制を立て直そうとするも、こんな暗闇の中で受け止められるはずもなく、後ろにあった壁に倒れかかる。
「っ…ハル、くん…」
「………」
――…心底、ホッとした。
今、はなは僕の腕の中にいる。
息をしている。
泣いている。
僕の名前を呼んでいる。
回された手、密着した体から、体温を感じる。
―――あぁ、温かい。
「……どうしたの、はな」
そっと、泣いている彼女に声をかける。
「……っ…ハルくんがねっ…どこか遠くへ行っちゃうんだ……っ」
そう言えば、さっきもはなは、そう言っていた。
僕がどこかへ行っちゃうって、なんでそんなに確信を持って言ってるんだろうか。
「…っ…やだよっ…ハルくんどこにも行かないでっ…」
はなはそう言うと、僕に抱きつく力を強めて、また泣き出してしまった。
「………どこにも行かないよ」
大丈夫。ずっとはなの傍にいるから。
そう言って頭を撫でると、はなは安心したのか、だんだんと落ち着いてきて、すぐに寝てしまった。