ナチュラル
たまらなく、
『……うっ……は、るくんっ…ひっく…』
「……はな…?」
まだまだ毛布を片付けるには肌寒い、春の夜中。
いきなり鳴り響いた着信に、非常識だなと苛つきながら電話にでると、電話口で、なぜかはなは泣いていた。
「……はな、何で泣いてるの」
もしこれが悪戯ならただじゃおかない。
かまってほしいんなら、寝起きの悪い僕に、そんな手は通じないし今後一切使わせない。
だけど、やっぱり今は、はなの様子がかなりおかしい。
『……っ…ハルくんがっ…とおくに…っ…行っちゃったの…っ』
「……僕ここに居るけど」
『…違うのっ…ハルくんっ…がっ…ひっく…』
「………っ」
待ってて、俺ははなにそう言い捨てて、カーディガンを羽織りすぐさま車に乗り込んだ。
ドアをつかむ手が、階段を駆け下りる足が、柄にもなく震える。
落ち着け、落ち着け。
不安と焦りでパニックになる自分を、必死で制御する。
ぼやける頭も、向(むかい)から走りすぎていく車のヘッドライトのおかげで、だんだんとはっきりしてきた。
何かあったのか、はなの居る隣町に車を走らせている中、僕の頭の中には不吉なことしか過ぎらない。
……誘拐、とかはほんとに勘弁してほしい。
頼むから、今も十分張り裂けそうな僕の心臓を、これ以上えぐらないでほしい。
いつものように理論がきかなくなってしまうから。