壊れたココロ
海斗は部活帰りということもあり、シャツのボタンは上が開き、袖はまくりあげていておまけにネクタイはゆるめという陸さんとは全く真逆のスタイルをしている。
なんであんなに騒がれるのか、どう考えてもあたしにはわからなかった。
「なにジロジロ見てんだよ。」
上から下まで見ていたあたしの視線に海斗は言った。
「どこがそんなにモテんのかな?と思って!」
「何言ってんだお前?」
「だって、今日女の子達に騒がれてたじゃん。海斗がモテるなんて聞いたことなかったし、本当は彼女いるんじゃないの!?」
あたしのその言葉に、海斗は少しため息混じり答えた。
「ハァ…だからお前はガキなんだよ。好きでもない女に騒がれて嬉しいかよっ、ましてや付き合えるか。」
それもそうだ。
人を好きになる気持ちなんてそう変わるものじゃないというのは、あたしもよく知っていた事だった。
「下らないこと考えてないで、お前は勉強しろっ。
じゃあな。」
そんな話をしてる間に、家の前まで来ていた。
海斗の家は遠回りだったのに…送ってくれたのかな?
「ありがとね、海斗。」
海斗は無言のまま振り返りもせずに、ただ片手を上げた。