壊れたココロ
「俺が小学生だった頃、父さんと海斗の3人で、よく近くの土手まで行って、サッカーをやって遊んでたんだ…。」
陸さんのお父さんは、陸さんが中学生の時に仕事中の事故で亡くなっていた。
そんなお父さんを思い出し少し遠い目をしながら、懐かしそうに陸さんは話し始めた。
「海斗はまだサッカーが下手で、俺と父さんのところにボールをうまく返せなくて、よくふてくされてたよ。」
「へぇ、あの海斗がね。」
今の仏頂面の海斗から想像すると意外で、あたしは少し笑えた。
「そんな時、落ち込んだ海斗を励ますように父さんが教えたのが四つ葉のクローバーなんだよね。」
陸さん達のお父さんから…。
「春になると、土手は一面クローバーだらけなんだよ!その中から四つ葉のクローバーを見付けて、父さんが海斗に渡して言ったんだ。
“四つ葉のクローバーは幸運のお守りだから見つけて大事にすると願いが叶うんだよ”って。」
「海斗も小さかったから、すっかり信じ込んで、そのクローバーをずっと大事にしてたんだよ。それから海斗の努力もあって、サッカーも上手くなってきて、本当なんだって思ったらしく、それから何かあるたびに四つ葉のクローバー探してたんだよ。」
陸さんはそう話すとクスッと思い出したかのように笑った。