壊れたココロ


「俺が小学生だった頃、父さんと海斗の3人で、よく近くの土手まで行って、サッカーをやって遊んでたんだ…。」


陸さんのお父さんは、陸さんが中学生の時に仕事中の事故で亡くなっていた。


そんなお父さんを思い出し少し遠い目をしながら、懐かしそうに陸さんは話し始めた。


「海斗はまだサッカーが下手で、俺と父さんのところにボールをうまく返せなくて、よくふてくされてたよ。」


「へぇ、あの海斗がね。」


今の仏頂面の海斗から想像すると意外で、あたしは少し笑えた。


「そんな時、落ち込んだ海斗を励ますように父さんが教えたのが四つ葉のクローバーなんだよね。」


陸さん達のお父さんから…。


「春になると、土手は一面クローバーだらけなんだよ!その中から四つ葉のクローバーを見付けて、父さんが海斗に渡して言ったんだ。
“四つ葉のクローバーは幸運のお守りだから見つけて大事にすると願いが叶うんだよ”って。」


「海斗も小さかったから、すっかり信じ込んで、そのクローバーをずっと大事にしてたんだよ。それから海斗の努力もあって、サッカーも上手くなってきて、本当なんだって思ったらしく、それから何かあるたびに四つ葉のクローバー探してたんだよ。」


陸さんはそう話すとクスッと思い出したかのように笑った。


< 73 / 104 >

この作品をシェア

pagetop