Cross Over
『もちろんこうなるとは思ってたけど、2度目というのはより一層嬉しいわね♪』
ルンルン気分の先生の隣を歩く。
『そうですね・・・』
昨年に引き続き、
今回も最優秀賞を頂くことになり、
コンクールが行われた会場へ、先生と二人赴く。
審査員に選ばれたいくつかの賞の受賞者のみが、この会場の表彰式へと呼ばれている。
コンクールより緊張するんだよねー・・・。あの独特の雰囲気が。
息が詰まりそうになるのを耐えてげっそりしていると、先生が優しく肩を叩く。
『ピアノを弾く時はあんなに堂々と自分の中に入り込むのにー。胸張って堂々と、賞をもらえばいいのよ♪』
お気楽な先生に苦笑いをする。
ーーーー。
無事表彰式も終わり、
会場近くの広場のベンチに腰掛け、一人胸を撫で下ろす。
『終わった・・・。』
ミルクティーの缶を握り、空を見上げる。
・・・。
すっごいいい天気ー。
雲一つない晴天。
日差しが眩しいほど照りつける。
ふと、広場の時計台に目をうつす。
公園を走り回る子供や、楽しそうに笑う家族連れが目に入る。
まだ午前中か。
先輩まだ寝てるかなー。
朝に弱い先輩の寝顔を思いだし、ふと一人微笑む。
『表彰式日和のいい日だね。』
ふと、声がし隣を見る。
あっ・・・・
慌てて立ち上がる。
『こっ・・・この間は、ありがとうございましたっ・・』
あたふたと頭を下げる。
コンクールで会った初老の男性。
ふと微笑んだその目は、優しくこちらを見ていた。