Cross Over
壁
『倉沢?』
手すりに肘をつき、佐山がこちらを見る。
うなずく俺に、遠くを見て眉をしかめる。
昼間の屋上。
煙草をくわえ、火をつけたあと、
佐山が、あ、と目を見開いた。
『営業課の倉沢って・・あのナヨナヨした女みてーなやつか!』
佐山がこちらを見る。
『なーんか、生け簀かねー野郎なんだよなー』
煙草に火をつける。
いっつも女にヘラヘラしやがってよ、と
佐山が遠くの景色を見ながら煙草を吸う。
・・・
・・お前は違うのか。
心の中で突っ込んだが、言葉にするのも面倒で無言を貫いた。
『・・・他に、倉沢のことで知ってることないか。』
手すりに肘をつき、佐山と同じ方向に視線を向けながら質問する。
んー・・・、と佐山が考えこむ。
・・・・
しばらく沈黙したあと、
はっ!と、何か思いついたように、神妙な顔つきで急にこちらを見た。
『・・・・・』
『・・・・・』
佐山の真剣な表情に、ふと、眉をしかめて佐山を見る。
・・・・・
佐山の表情と
重い沈黙に
徐々に焦る気持ちが高ぶる。
・・・・
・・・・
神妙な顔つきで佐山が、一言つぶやいた。
『・・・・・・ないわ』
『お前殺されてえのか。』
あ、と佐山が指を立ててこちらを見る。
『もしかして莉菜ちゃん、倉沢となんかあったのか?倉沢が、まさか莉菜ちゃん狙いとかっ?』
ニヤリと笑いながら、佐山が顔を覗き込む。
『・・・わかんねえ。』
まっすぐ前を見つめたまま、煙草の煙を吐き出す。
『・・・・?』
佐山が不思議そうに俺を見る。
『俺もその倉沢のことは詳しくは知らない。特に関わったこともないし。でも、何故か思うんだ。』
ふと視線を下に落とす。
『あの倉沢ってやつ。莉菜が目的か何か知らねえけど・・・』
煙草の火を見つめる。
『何か奥にある。』
真剣な表情で眉をひそめ、俺の言葉に耳を傾ける佐山を隣に感じながら、
ゆっくりと煙草の煙を吐き出した。