Cross Over
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『あんの野郎ほんとに生け簀かねーな・・っ』
ぶつぶつ文句を言いながら佐山と高本が陰からロビーを見つめる。
その後ろで、壁に背中をもたれ、ため息をつきながらポケットに手をいれた。
・・・こいつら。一体なんだと思ってんだよ。
呆れながら壁に背と頭をつける。
ロビーの中を見ていなくても、楽しそうな話し声と時折笑い声が耳に入る。
その時。
倉沢の声が聞こえた。
『じゃあ今度さ、一緒に見に行かない?水族館とか。動物園とか何処か好きなとこ。』
佐山と高本が顔を見合わせ、息を飲んだようにロビーに視線をうつす。
・・・・
しばらく沈黙が続く。
『ごめんなさいあたし・・・』
莉菜の声が聞こえた。
『あたし・・・・お付き合いしてる人がいるのでそういうのは・・・。』
『新崎さん?』
ーーーー・・・!
倉沢の言葉に、ふと視線をあげた。
高本と佐山が同時に振り返り、驚いたように俺を見る。
『・・・・!』
『新崎さんなんでしょ?黒川さんが付き合ってるのは。』
目を見開いて驚いたように倉沢を莉菜が見上げている。
ーーーーっ。
思わず、その場へ向かうため足を踏み出す。
『待て。』
佐山が止める。
・・・だから一体なんなんだよ。
苛立たしく引き止める佐山を見る。
『・・・お前の予感、確かに正しいかもな。』
・・・・
いつの間にか、ふざけ半分だった佐山の目が真剣な目付きへと変わっていた。