Cross Over

『それはっ・・・』


『大丈夫。俺、誰にも言わないから。』






口ごもる莉菜に、倉沢がにこっと微笑んだ。










『・・・・』








莉菜・・・








黙っている莉菜を見つめる。










『・・・はい。そうです。』






うつむいて莉菜が答えた。













その時。








ーーーーー。








一瞬だが、





倉沢が笑った。





ーーーー。




それは、微笑みかけるような優しい笑みではなく、



何かを秘めているような、



冷たい微笑みで、






うつむいている莉菜を





見たように感じた。













・・・・









『そっか！』




倉沢が一瞬にしていつもの笑顔に戻る。




『・・そうじゃないかと思ってたんだっ。』




照れたような困ったような表情で、頭の後ろに手をまわす。







『倉沢さん・・・』





莉菜がなんとも言えない表情で、倉沢を見上げる。








『いいんだ。ごめんね？なんか黒川さんのことも知らず、誘っちゃって。』





罰が悪そうに、そして少し焦るように目を細めて笑う。






『ごめんなさい。あたしなんかにそんな風に・・・』



うつむく莉菜に、いやいやいや！と慌てたように手を振る。





『新崎さんには敵わないから・・。あの人は、男から見ても憧れの人だし。あんな人が相手じゃ、張り合えないよ・・。』





困ったように、そして頬を少し赤らめて照れるように視線をそらしながら、莉菜に言う。







『倉沢さん・・・』






莉菜が、ほっとしたような表情で倉沢を見上げた。










・・・・







あいつ・・・





にこやかに微笑む倉沢を見つめる。









そろそろ行こうかと伝える倉沢に、


はい、と返事をして莉菜がうなずく。









その時。







『でも。もし・・・。』




倉沢の言葉に動きを止めて目を見開いた。






ーーー。







『もし、新崎さんを受けとめきれなくなったら。その時は、いつでも待ってるから。』








ーーーーっ・・・。







体が凍りつく。










・・・・






莉菜に微笑む倉沢を見つめながら、ぎゅっと握りしめた手に力が入る。









『ーーーえ？』




莉菜が目を見開いたまま、


優しそうに笑いかける倉沢を見上げたーーー。