Cross Over
ーーーー・・・倉沢さん?
倉沢さんの言葉の意味を理解しようと、頭を働かせる。
・・・受けとめきれなくなったら・・?
倉沢さんは微笑んでこちらを見ている。
・・それって
どういう・・・・
『それ、持つよ。』
倉沢さんが、優しい微笑みで手を差し出す。
え・・・?
ふと我に返り、
持とうとしていた資料が入った紙袋を自分が持ち上げようとしていた途中だったことを思い出す。
『あっ・・・・すいませ・・』
ーーーー。
その時。
持とうとした紙袋が、隣から伸びた大きな手に持ち上げられた。
ーーーーー。
『お前に心配されることなんか、なんにもねえよ。倉沢。』
ーーーー。
左を見て、
目を見開く。
新崎先輩っーーー・・・・・
ポケットに手をいれ、紙袋を軽々と肩に後ろ手で担ぐように持った新崎先輩が、
隣に立ち、倉沢さんをいつもの余裕のある表情でまっすぐ見つめる。
『・・・・・』
目を見開き、新崎先輩を見ていた倉沢さんが、
しばらくしたあと、ふっと微笑んだ。
『これは大変失礼いたしました。新崎さん。』
ふと、優しく微笑み倉沢さんが新崎先輩を見つめた。
ーーーーー。
お互いに目を見たまま動かない、
新崎先輩と倉沢さんを交互に見る。
ーーーーー。
なんとも言えない空気と、
無言がロビーを包む。
新崎先輩を見上げると、
余裕のある雰囲気と表情の中に、
最近の新崎先輩の表情からは見られない険しい目付きで、
倉沢さんを見ていた。
ーーー・・・・
新崎先輩・・・・?
倉沢さんが、私の方を見てふと微笑む。
『じゃあ黒川さん。この前、頼んだ資料よろしくね。』
『あっ・・はいっ。』
呆然と立ち尽くす私に何事もないかのように微笑み、
また、と手をあげて、
新崎先輩のほうを見ずに倉沢さんは背を向けた。
そのままゆっくりと、通路の奥へ歩いていった。
ーーー。